DTC133

Wacom One DTC133の写真

Wacom One(DTC133)は僕が高校生の時にほぼ新品の中古品を破格の値段で買って以来愛用している液タブだ。長らく定番エントリーモデルの地位をほしいがままにしていたが,昨年とうとうモデルチェンジが行われついに型落ちとなった。

とにかく頑丈なこと以外褒めるところに乏しいモデルだが,FHD/60fps対応で4096段階の筆圧検知は初心者にとって十分すぎる機能と言って差し支えない。

ただ唯一不満だったのがケーブルだ。

ケーブル

Wacom One DTC133用のケーブルの写真
          type-c形状の端子(タブレット側)
           │
           ├── USB type-A(5V/2A供給用)
           │
           ├── USB type-A(通信用)
           │
           └── HDMI(映像)
          

x-shape cable とかいうおしゃれな名前で売られているが,硬い・重い・ゴツいに加え微妙に短い。そのうえやたらと高価なのでおそろしい。

やはりこのケーブルに対する不満の声は開発者の耳にも届いたようで,昨年デビューした新型では「普通のdp-alt対応のtype-cケーブル」一本でも接続できるようになっている……

そう,結論から言うと旧型はできない。タブレット側についているtype-c形状のレセプターはtype-cとして使われているわけではないのだ。

きわめて腹の立つ仕様だが,小さなカマボコ状の窄まりの奥にレセプターが配置されていて穴に対応した形状を持つ例のケーブル以外は挿すことはできず,それも裏表を間違えると挿さらないように工夫されている。

左に伸びるケーブル

正しく挿した結果,なぜかケーブルは左にしか出すことができない。

ないものは作ろう

これをやったのはかなり前のことなので,出来のまずい工作なのは堪忍してほしい。端子や通信プロトコルに関する知識も当時まったく持ち合わせていなかったが,「Type-c映像転送に対応している延長ケーブルならいけるだろう」と思い込みに近い確信を得てほうぼうを探し回り,ついに1mのtype-c延長ケーブルを入手することに成功した。

デザインナイフでプラグを削る

カマボコ状の穴を確認しながら慎重にPE樹脂を削る。削りすぎると修正が効かないが,案の定削りすぎて裏表どっちも挿さるくらいガバガバになってしまった。

プラグは穴に挿さるようになった

(ちなみに,ガバガバになった部分にはマスキングテープを巻いて調整しているが,抵抗が増えて抜け止めの役割を果たしているのか以前より頼もしくなった気がしないでもない。)

一応映る

例のケーブルのプラグと延長ケーブルのレセプターをつないでみると拍子抜けするくらいあっさり画面がついた。 しかしプラグの裏表を入れ替えると電源はつくが映像は映らなくなる。この時点でタブレット側から出てくる信号が独自仕様であることはなんとなく察していた。

後から気づいたことだが,これは入手した延長ケーブルがパッシブケーブルだったためにできたことのようだ。内部のICチップで信号を増幅するアクティブケーブルでは独自プロトコルを処理できないためだ。

真相

しばらく経ってからこのような報告を見つけた。

Connections of Wacom One x-cable usb-c board (documentation purposes) - r/wacom

やっぱり信号はUSB規格に準拠したものでなく独自らしい。ピンアサインを見る限り電源だけ合わせてそうなのは興味深い。

ACアダプタにつないではいけない

ちなみに,DTC133は5V/2Aの電源に繋がなくてもUSBのバスパワーでまったく問題なく使用できる。

罰ゲームみたいな設計のACアダプタを使わせようとしてくるのでこれも頭にきていたのだが,WindowsからLinuxにメインを乗り換えたあたりからデスクトップの調子がおかしくなったので調査したところ,例のケーブルからHDMI経由でマザーボードに電源が供給されるというわけのわからないことが起こっていた。

ACアダプタから取り外して以降はなんの問題もなく動作している。

ライセンス情報

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Kitazawa SakufuによるWacom One (DTC133) をType-c1本でつなぎたかった話クリエイティブ・コモンズ [表示 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。