『百年の孤独』とは

三宅瑠人による百年の孤独 (新潮文庫)の表紙

百年の孤独 (新潮文庫)

出典: 国立国会図書館サーチ

先日(といっても3ヶ月くらい前のことだが),ガブリエル・ガルシア・マルケスによる『百年の孤独』の文庫版が刊行された。

作者のガブリエル・ガルシア・マルケスはコロンビア出身のラテンアメリカを代表する作家の一人で,ノーベル文学賞受賞者でもある。

『百年の孤独』は1967年の作品で,邦訳自体は1972年に出ているものの日本では長らく文学ファンのみが知る名著として知られてきた。

この作品は文庫化されたら世界が終わるという大げさなキャッチコピーでも知られているが,めでたく文庫化されてしまった。

何がすごいか

まず第一に文庫版の『百年の孤独』は信じられないくらいバカ売れしている。どこの本屋に行っても入ってすぐのところに平積みされていて,「売れてます!」とか「今月のNo.1」など誇らしげなポップが添えられている。

つい昨日までラテンアメリカ文学のことなど考えたことすらなかった人たちが立ち止まり,興味深そうに手に取っている。文学に限らず,本そのものの市場が縮小する現代に於いておいそれと見られた光景ではない。

これだけ世間を騒がせた原因はひとえに文庫化という衝撃に尽きる。

内容

蜃気楼の村マコンドを開墾しながら、愛なき世界を生きる孤独な一族、その百年の物語。錬金術に魅了される家長。いとこでもある妻とその子供たち。そしてどこからか到来する文明の印……。目も眩むような不思議な出来事が延々と続くが、予言者が羊皮紙に書き残した謎が解読された時、一族の波乱に満ちた歴史は劇的な最後を迎えるのだった。世界的ベストセラーとなった20世紀文学屈指の傑作。 – 百年の孤独 | 出版書誌データベース

結論から書くと,これは小説というよりもラテンアメリカ世界の「神話」である。

魔術と精神世界,暴力と残酷性,時空超越,身を焦がす情熱,西洋文明との接触などが一族の歴史の断片によって織り上げられている。

600ページ以上とかなりボリュームはあるが,ぜひ読み切ってほしい。ただ,『百年の孤独』をもっと楽しむためにおすすめの一冊がある。

これを先に読め

20世紀ラテンアメリカ短編選の表紙

20世紀ラテンアメリカ短編選(岩波文庫 ; 32-793-1)

出典: 国立国会図書館サーチ

「ラテンアメリカ文学」なんてほとんど聞いたことない人向けの一冊。マジの傑作が16遍。ボリューム控えめで,かつ全部短編なので読みやすい。もちろんガブリエル・ガルシア・マルケスの作品もある。

文学に前提知識を持ち込もうとするのは愚かしいと自分でも思うけど,この「空気感」だけでも触れてから『百年の孤独』を読み始めたほうがいいと思う。

『百年の孤独』を読み終えた人向けのおすすめの本リストみたいな記事はネットにたくさんあるが,読む前というのは少ないということで。

その他

読み解き支援キットなる便利なものも配布されているらしい。

思いっきりネタバレしてるので,読み終わってから使うのがいいだろう。

はてな匿名ダイアリーでもこんな記事が話題になっていたので参考までに。

ライセンス情報

Creative Commons License

Kitazawa Sakufuによる『百年の孤独』を読む前にクリエイティブ・コモンズ [表示 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。